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机上の空論に終わらない JPデジタル 柴田CIOと語る、巨大組織を変革するとはどういうことなのか


全国で40万人以上が働く日本郵政グループのDXを担うJPデジタル。CIOを務める柴田彰則さんは、一人ひとりが力を発揮できる組織づくりの真っ最中。
JPデジタルの”中の人”として創業から携わる、Ballista 代表の中川貴登。JPデジタルの立ち上げから、大企業の組織変革における苦労や気づき、思いなどを語ります。

柴田彰則さん(以下、柴田):中川さんは、組織の枠を超え、JPデジタルという会社をゼロから作り上げてきた同志です。

中川貴登(以下、中川):その後、私が独立しようか悩んでいたときに、「独立しても一緒にやろう」と背中を押してくれたのが柴田さんなんです。

柴田:中川さんは、コンサルティングファーム、ひいては世の中を変えたいという熱い思いを持っています。かなり難しいテーマだと思いますが、それを最後まで貫いてほしいなと思っています。

日本郵政グループが変われるなら、他の日本企業だって変われる

中川:柴田さんはどんなモチベーションで日本郵政グループのDXに取り組んでいるんですか?

柴田:私は以前、外資系ITベンダーに勤めていました。やりがいはありました。ただ、当然結果を出さないといけないわけです。お客さまが第一義ではない提案もふえてきました。

例えば、トラブルに見舞われたお客さまを何とかしてあげたいのに時間が割けないとか、お客さまが求めていない商品を売らないといけないとか。このまま続けるのが本当に自分のためなのかと悩みました。そんなとき、挑戦するなら今だと思って日本郵政に飛び込みました。10年前のことです。

日本郵政グループは典型的な日本企業です。皆さん真面目で愛社精神が強く、もっと良くしたいと思っている。でも、どうしたら良くなるのか分からない。変わらないとと思っても、変われる自信がない。これって日本の縮図ですよね。

この日本郵政グループが変われるなら他の日本企業だって変われると思うんです。世の中の役に立つとか、世の中を変える一助になれたとか、今はそう思えることがモチベーションになっています。

「変わりたくない人」と協力して進めるには

中川:「変わりたくない」という人も一定数いますよね。

柴田:何事も突然「変えてください」と言われたら誰だって抵抗感があると思うんです。相手をリスペクトし、そこに至る背景を理解しながら寄り添っていかないと。試行錯誤の最中ではありますが、私はそれが楽しいです。

得てして変革者って「いいからやれ」となりがちです。世界ではこういう理論やフレームワークが流行っているとか高尚なことを言いますよね。でも、いま郵便局で起きている揉め事はこんなです。そのギャップを理解しない限り、本当の意味で変えることなんてできません。

ポイントは、心理的安全性をできるだけ担保した上で、小さな成功体験を積む機会を作っていくことです。みんな変わることが不安なんです。その気持ちに寄り添い、まずは心配事を排除する必要があります。「失敗の責任は全て取る。だからチャンレンジしてみようよ。」と言ってあげるのが良いと思うんです。

一人ひとりが力を発揮できれば成果は出る

中川:DXで成果を出すために多くの企業が苦労していますよね。

柴田:一番大事なのは、その人が自己実現できる環境を整えることだと考えています。私は常にその人のやりたいことが今の仕事と直結しているか考えています。これを実現するには、一人ひとりとしっかり向き合うことが大切です。

中には、自分は何がしたいのか見出だせていないメンバーもいます。その場合、いろいろな問いかけをして引き出していきます。これからは個の時代です。自分の中で「こうありたい」という戦略を持っているほうが、仕事を選ぶ上でも最適化していく上でもポジティブに働くはずです。

中川:私も、「個の可能性」はすべての人に必ず存在していると考えています。私たちBallistaは、「個」を信じ、「個」を覚醒させ、その可能性を育むことによって、唯一無二のプロフェッショナル集団を構築しています。

JPデジタルでは、スクラムといって取り組むテーマによってチームを編成していますね。

柴田:スクラムで意識しているのは権限委譲とエンパワーメント。「あなたがやっていいんですよ」という環境を作っていくことです。ただ、今はスクラム内での意思決定に苦労しています。組織の都合に引きずられてしまったりと、主体性を持って決めるという点では改良の余地があります。

スクラムに限らず、新しいものを自分たちの組織にフィットさせるには、トライ・アンド・エラーしかありません。達成目標を作って都度振り返り、改善していく。スクラムをやってみて初めて分かったのですが、始めたばかりの頃と、一回まわして大体こんなものだと認識が合ってきた頃とでは、同じことが起きたとしても受け止め方が全く違うし、打ち手も変わってくるんです。ですから、教科書的な理想やメソッドは頭に入れつつ、自分たちで考えていくしかないんです。

大企業のコンサル病と具体を突き詰めてビジネスを創り上げるということ

中川:柴田さんと一緒に仕事をしていて感じるのは、机上で終わるのではなく「具体にする」こと。私自身、最初はそこにコンサルタントとしてのハードルを痛感しました。

例えば、スクラム一つとっても、コンサルタントはフレームワークやベストプラクティスを紹介し、「これを入れればなんとかなる」といった提案をしようとします。いわゆる「コンサル病」です。実際には置かれた環境が全く違いますから、その事例をそっくりそのまま適用するなんてできないんです。JPデジタルの場合は具体に何をすればいいのか、一つずつかなり突き詰めていく必要がありました。

柴田:そうですね。フレームワークってかなり本質を理解していないと使いこなせないんです。

スクラムの根本的な目標は、アウトプットを明確にし、そのアウトプットを出すために最善な方法をチームで実現していくことです。よくある課題として、アウトプットが決まらず、検討したままスクラムを始めるということがあります。アジャイルで進めていくうちに当然結果が変わることもあるから、後で決めればいいじゃないかというのです。しかし、それは本質的にずれている。結果的にアウトプットが変わってもいいのですが、最初にアウトプットを決め、それをどう最適に作っていくか考えないと、全てが無駄になってしまうんですよね。

そんなとき、コンサルタントとのやり取りで陥りがちなのが、「なるほど、御社の場合このやり方では問題が起きたわけですね。でも、フレームワークはこうなので、この中でうまくやってください」といったようにフレームワークに合わせようとしてしまうことです。ここがその後の成果につながるか否かの分岐点だと思っています。

中川:フレームワークを越えた具体を作れる人たちが大事になっていきますよね。状況が日々ダイナミックに変わっていく中で、具体への期待値もどんどん変わっていきます。昨日はよしとしていたものが、今日はもう違っているということもある。そのスピードについていくには、コンサルタントが現場の一プレーヤーでいることが大事なんだろうなと強く感じています。

柴田:コンサルタントも大きな賭けができなくなっていますよね。リスクを取ってお客さまに全力投球するというか、勝負を挑むようなことが難しくなっている。要は、教科書通りのことしかできなくなっている印象です。

中川:私もそう感じています。これからのコンサルタントは、会社のブランドではなく、一人ひとりがプロフェッショナルとして尖っていく必要があるのだと思います。そうでないと、本当の意味でのバリューは出せなくなるという危機感があります。

Ballistaは、コンサルティングが目的ではなく、お客さまとビジネスで結果を出すことを目的としています。報酬はもちろん大事ですが、それに縛られず、結果が出なかったらどうにかしてできるまでやりたいと思っています。

柴田:一方、われわれユーザー側も賢くならないと、パートナーがどんなに素晴らしくても、その能力を生かせないと思うんです。

中川:柴田さんの言う「賢さ」とは何ですか?

柴田:自分がやりたいことをきちんと理解できていることです。自分たちの課題を正しく捉え、そこからどう変えたいのか、それはユーザー側が定義しないといけないことです。今はそれすらコンサルタントに求めてしまうユーザーが多いのではないでしょうか。ユーザー側に「変わりたい」という意思がない限り、変革など進みません。

「社内改善スクラム」が進行中―変革のモメンタムを作る

中川:私が今、JPデジタルで若手メンバーと一緒に進めているのが「社内改善スクラム」です。社内の火種を改善していくこのプロジェクトは、変革のモメンタムを作る上で非常にポジティブに働き、改善リストは50件を超えています。

柴田:新しい事業やサービスって、どんなに斬新なものでも最初は一つのアイデアから生まれるんです。これまでの日本郵政グループには、そういうことを提案し、受け入れてくれるような文化がありませんでした。JPデジタルでは、自分発で動くこと、アイデアを無邪気に提案していいんだという空気を醸成したいと思っています。実はこの「社内改善スクラム」自体、あるメンバーの「最近、いろいろ変えたいことがあるんですよ」という一言から始まったんですよね。

中川:他にも「メタバースをやってみよう」といった声が出てきています。

柴田:まさに鋭意検討中です。オフィスの中でメタバースを使ってコミュニケーションを円滑にできないか。それを応用して、郵便局のサービスにもメタバースを活用できないかといったアイデアも出てきていますよ。

中川:巨大な組織の看板があることで、主体性を失っている人たちも一定数いるでしょう。現代は、個人が活躍することで、社会や組織、そして事業へインパクトを与えることができる時代です。企業名やブランドではなく、個人の持つ本質的な価値が評価され、重視されます。我々Ballistaはプロジェクトの支援を通じて、一緒に関わるメンバーが自分のキャリアに主体性を取り戻すきっかけ作りができればと思っています。