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ChatGPT出現 デロイト トーマツ グループ 森正弥氏に聞く、これからのコンサルタントの価値は?


ChatGPTをはじめ、多くの優秀なGenerative AIが登場しています。コンサルタントの危機も叫ばれる中、デロイト トーマツ グループ パートナー、Deloitte AI Institute Japan, Leaderの森正弥氏は、「むしろ、ここからがコンサルタントの時代だ」と断言します。その心は?

「コンサルタントの価値は?」 ChatGPTに聞いてみた

中川:早速ですが、ChatGPTに「ChatGPTが有能な状況下でコンサルタントの価値とは何でしょうか?」と聞いてみました。

:ChatGPTは、大規模言語モデルをベースにしています。まずはChatGPTが登場した流れからお話しましょうか。

実は、ディープラーニングに関しては、当初、言語処理の前に画像処理の性能向上で注目されました。Convolutional Neural Network(CNN)というディープラーニングのアーキテクチャは、レイヤーをたくさん積んで学習していきます。上のほうのレイヤーでは、猫がぼやっとかわいいとか、ふわふわしていそうなテクスチャーとか、そういう抽象的なことを学習しています。下のほうのレイヤーでは、目や髭のパーツといった具体的なことを学習しています。つまり、抽象から具象まで多層的に学習するという、既存のコンピューター処理とは全く違う概念がここで提示されたのです。

その後、2017年にGoogleが発表したTransformerでは、言語処理の性能が劇的に向上しました。時間軸での処理に加えて注意機構、つまり、これは重要だからしばらく覚えておこうという記憶や注意の概念を入れたのです。注意するメカニズムを追加することで言語処理や音声認識の性能が極めて高くなるなんてすごいなと皆が思ったんです。

ディープラーニングの進化を端的に表わすのがパラメーターの数です。ディープラーニングが注目されるようになった2012年頃は、内部のパラメータの数は数千万程度でした。そこからどんどんパラメータが増えていき、増えるのがもはや普通になって皆が少し油断していたのですが、ChatGPTではGPT-3.5のバージョンでパラメータ数が1750億になっていました。1750億ものパラメータを駆使することで実現できたのが、ChatGPTなのです。

でも、結局やっていることはプロットです。あらゆる言葉の概念を抽象から具象に並べ、時系列順に並べ、「この言葉をより抽象的にするとどうなるか」「この言葉をより具体的にするとどうなるか」「この言葉が発生した次はどういう言葉が来るのか」といった統計的なモデルなのです。そこに人間のような意識や思考はありません。そこにあるのは、巨大な言葉のデータベースであり、ネットワークなのです。

AI vs. コンサルタント

:重要なポイントは、人が「絶対に勝てないこと」と「勝てること」があるということです。ChatGPTは言葉の概念を扱うのが非常に得意です。そのため、概念の壁打ち相手としては、驚くべきインスピレーションを与えてくれます。

しかし、そこには具体的な情報や具体的な経験はありません。人はアクションを起こすために情報収集をしていますが、自分たちのビジネス領域に特化した課題やその道のプロフェッショナルとのコネクション、ネットに公開されていないけれど参考になる事例など、いざアクションを起こすために必要なことに関しては、ChatGPTは回答してくれません。

例えば、ChatGPTに「AIガバナンスに必要なことは何ですか?」という質問をすると、ChatGPTは、ガイドラインを作るとか評価のフレームワークを作るとか、必要事項を箇条書きにしてくれるでしょう。でも、「進もう」という話にはならない。それを実現するには自社の場合どんな障壁があるのか、上司をどう説得し、誰と組めばうまくプロジェクトを推進できるのか、生きた情報から考え、実行していくのは人間の仕事です。

中川:なるほど。これからのコンサルタントに求められるのは、情報や概念の整理ではなく、コミュニケーション能力やリーダーシップ、そして、深い知識を組み合わせ、ビジネスにインパクトのあるものに変えていく力だということですね。

:何をもって”深い”とするのかも重要です。GPT-3.5からGPT-4になった段階で、専門性のレベルが段違いに向上し、より深い知識が必要な質問にも対応できるようになりました。そう考えると、やはりこれからのコンサルタントに求められるのは、より深い経験だと思います。

若手や経験の少ないコンサルタントはどうすればいいのか。今までにない案件を創出し、自分なりのやり方を模索することが突破口になると思っています。前例がなければどこにも情報はありませんので、ChatGPTにはカバーできません。

ただ、それもレッドオーシャン化したらChatGPTがカバーしてしまいます。ですから、コンサルタントという枠にとらわれず、当事者として果敢にチャレンジすることが重要だと思います。

中川:常に新しいことに挑戦していれば、コンサルタントはAIに淘汰されないということでしょうか。

:私はむしろ、ChatGPTのようなGenerative AIが普及することで、コンサルタントの時代がやってくると考えています。

これまでコンサルタントの仕事は、概念を整理することが大きな部分を占めていました。それについては「淘汰される」と言えなくもありません。しかし、残った部分、つまり、経験や生きた人脈、そのようなリソースを活用して新たな価値を創出することこそが、コンサルタントに求められる本質であり、Generative AIにはできないことです。むしろ価値だけが残った。このことに気づき、シフトできるコンサルタントは、今よりもっと伸びていくはずです。

中川:これまでのコンサルタントは、いわば参謀のような役割でした。今後は、より事業開発的な立場で価値を発揮していくことになりそうですね。大きな変化が求められますが、どうすればシフトできると思いますか?

:Out of the Box――つまり、コンサルタント自身が作り上げてきた枠組みやアプローチを否定する必要があります。

コンサルタントが顧客と経営課題について議論すると、必ずと言っていいほど二つにたどり着くんです。一つは、人材が足りない。もう一つは、トップのリーダーシップが足りない。何を話しても結局この二つ。これって単に考えたつもりになっているだけなんです。人材とリーダーシップの話をNGにして具体的なアクションを考えてみるとか、既成のアプローチを否定していかなければ、変革は進みません。

プロフェッショナルギルドに期待するのは「良質なクエスト」と「品質」

中川:私たちBallistaは、多様なスキルを持ったプロフェッショナルたちが、「プロフェッショナルギルド」として、社会課題を解決していくことを目指しています。これまで会社という枠組みの中でやってきたプロジェクトを、プロフェッショナルな個人の活躍で成し遂げられるような仕組みを作っていきたいと考えています。

:非常に興味深い取り組みです。プロフェッショナルギルドにおいて特に重要なのは、良質なクエストを提供できるかどうかです。プロフェッショナルの目利きによって、解くべき社会課題をどんどん見出していくことが大事だと思っています。

中川:おっしゃる通りで、今までクエストボード化するところができていなかったと思います。プロフェッショナルな個人や企業が連携し、「このクエストはあなたにお願いします」といった切り出しができると、DAO(分散型自律組織)的な世界に近づき、面白いことになっていくはずです。

:もう一つプロフェッショナルギルドに期待するのは、チームで品質を担保することです。今後もさまざまなGenerative AIが登場し、それっぽいクオリティのアウトプットが氾濫すると思います。プロフェッショナルに求められるのは、それっぽいものをプロの仕事に変えていくことです。Generative AIが概念を整理する時間を削減してくれる分、クオリティにエネルギーを注げるようになりましたからね。

しかし、プロフェッショナル一人が成し遂げられる領域には限りがあります。ですから、チームでクオリティを高めていくのがポイントになってくると思います。

Ballistaの強みは、リソースや人材を引っ張って来れることにあると思っています。中川さんはそういうのが得意ですしね。「人と人とのネットワークからプロフェッショナルを見出し、リソースやバリューを引き出してくれるのでは」と期待しています。