コンサルインフルエンサーから見た「新時代のコンサルティング」とは?
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- コラム
Twitterやnoteで注目を集めるコンサルインフルエンサー「外資系うさぎのちょこさん」と弊社代表の中川との特別対談が実現しました。数多くのコンサルフォロワーと日々向き合うちょこさんが、Twitterと現実の両者を俯瞰した中で感じているコンサル業界の今とこれから、そしてBallistaとプロフェッショナルギルドの可能性について伺います。
Twitterから見えるコンサルタント業界の現状とこれから
中川:最初にTwitterを始められた経緯やどのような内容を投稿されているのかについて教えていただけますか。
外資系うさぎのちょこさん(以下 ちょこさん):アカウントは2020年5月からなので3年が経過しました。Twitterにはこれまでいくつかアカウントを持っていましたが、一部の方しか見れないようにしていたので、オープンでコミュニケーションが取れるアカウントをなんとなく作ってみようと思ったのがきっかけです。
当初はビジネスニュースに関するコメントや読んだ本の感想などをつぶやいていました。始めてみると意外と反応をいただけ、流行りに乗って作ったコラ画像がバズることもあって。今は手応えのあったコンサル業界あるあるや、若い人に向けておすすめの書籍を発信しています。
またTwitterで反応が良かったテーマはストック的な意味合いで、noteで深掘りしています。
中川:現状2万人を超えるフォロワーを抱えていらっしゃいますが、その多くがコンサルタントなのではないかとお見受けしました。どういう方からコメントをいただくことが多いですか?
ちょこさん:体感としては、コンサルタント志望の就活生や転職活動中の方、また業界入りして間もない方が多いですね。一方でリプライを飛ばし合うようなベテランコンサルタントのような方もいらっしゃり、コンサルあるあるに関する情報交換もさせていただいています。
就活生や若手のコンサルタントからすると、こうした内容がためになる話としてバズるようです。それをnoteにまとめて言語化していくという流れが、最近パターン化しているなと感じます。
中川:フォロワーはちょこさんのツイートをどういう気持ちで見ていらっしゃるんでしょう。
ちょこさん:皆さんのリプライを見ていると、若い方は教訓的な意味合いで見てくれていると感じます。一方でベテラン勢の方々は「そうだよね」としみじみ感じながら見てくれているようです。
今(※取材日2023年6月5日時点)伸びているツイートは「オンラインで済むことでも、ちゃんと会いに行って話せばいいことあるよ」といった内容を引用リツイートしたものです。社会人経験の長い方のなかで意見が分かれて、それが反響につながっています。
話題のツイート:https://twitter.com/ChoConejito/status/1664982617219817475
コンサルインフルエンサーが感じる業界の潮流
中川:個人的に、ちょこさんのツイートに対する反応の分かれ方はコンサル業界の仕事に対する向き合い方の現状を表している気がします。
ちょこさん:そうですね、あくまで自分から見える範囲ですが、プレッシャーを感じながらハードワークで働きたい少数派と、ワークライフバランスを確保した上で仕事をしたいという多数派という感じで、スタンスが二極化しているなと思います。
また質問をくださるフォロワーさんを見ていると、一定しっかり悩んだ上で真面目に質問しているだろうなという方と、おそらくあまり考えず、すぐに外に答えを求めようとする方の二極化が起こっているように見えます。前者の質問は議論が起こって良い方向に向くこともありますが、後者だと「こんな考えでコンサルタントが務まると思ってるのか」と、周りから寄ってたかって叩かれてしまう。実際に名前が見えるファームの中で働いていても、コンサルタント個々のスタンスって明確にわかるものですが、匿名な場ではそれがよりわかりやすいなと感じています。
中川:Twitterでの反応と、コンサルの中での実際の部分を総合的に捉えて、どのようにお考えですか。
ちょこさん:異なる価値観やスタンスのメンバー同士がどう折り合いをつけて働いていくか、ある意味、お互いうまく妥協していくことが求められてくると思います。全員ハードワーク前提で、かつUp or Outの考え方も根強かった一世代前のコンサルファームでは、ふるいにかけられて最後まで残ったハイレベルなコンサルタントたちが集まって夜中まで頑張るみたいなスタイルでしたが、最近はそういうカルチャーが主流というわけでもなくなってきていますよね。特に総合系ファームだと、組み立てた戦略がちゃんと動くように現場の細かな部分まで掘り下げてチェックしましょうという案件や、クライアントのプロジェクトチームと長期間伴走する大規模なプロジェクトマネジメント支援といった案件が、割合としては増えていると感じます。
ですので高いパフォーマンスを目指すハードワーク上等な昔ながらのコンサルタントと、求められた期待値はクリアしつつワークライフバランスも重視する現代型のコンサルタント、この両タイプをうまく組み合わせたプロジェクトのあり方を仕組み化した上で、人海戦術で対応していくという産業化されたやり方でいいだろうな、とは思っています。
中川:こうした潮流を受けて、今後コンサルタント一人ひとりに求められるものは何だと思いますか。
ちょこさん:マネージャーは採用された人がどちらのスタンスなのか、アサインされてみるまではわからないと思うんです。こうした中で、ハードワークを経て早く成長したい人はガンガンやる、ワークライフバランスを重視したい人はヘルシーに、というのを本当にやっていくとすると、アサインされるコンサルタント側にも、最初から自分はどういうスタイルで働いていきたいのか、方向性を明示してもらったほうがいい気がしています。
これはマネージャー以上の層が誰をアサインするかという意味でも必要ですが、例えばハードワークで働きたい人に長期間のプロジェクトマネジメント支援の案件を任せてしまうと、モチベーションの低下につながることもあります。逆に2ヶ月で新規事業を考えてビジネスケースを出してくださいみたいな案件に、ヘルシーに行きたい層をアサインしてしまうと離脱してしまうこともあると思うんです。
人数と案件の比率が合うかという問題はありますが、ファームは個人の方向性を理解した上で育成し、誰に何を任せるかを決めて、チームを組んでいくほうがやりやすいのではと思っています。
ただ、個人の自覚している方向性と、周囲からの評価が一致しないこともあると思うので、そこをきれいにトラックに分けるというのは難しいだろうなとは思います。
中川:同感です。こうした中で私は、個人が自分の進む道を決めていかなければいけない時代に来ていると思っています。個人の思考がこれまでとかなり変わってきている中で、コンサル業界として、それらの新しい考え方に基づいてファームのあり方が変わっていく可能性があるのか、それとも同じファームの中でもハードワーク派とワークライフバランス派の二極化が強まっていくのか、ちょこさんはどうお考えですか。
ちょこさん:あくまで私見ですが、コンサルタント個々人の考え方やスタンスは多様であるものの、「昔ながらの尖ったタイプほどではないけど、ワークライフバランスを求めつつもコンサルタントとしてやるべきことはやる、ある程度なんでもそつなくこなせるタイプ」が多数派のように思うので、コンサルファームとしても必然的にその層をうまく活用していくようなあり方になっていくと思っています。
ファームごとに個別の事情があり一概には言えないと思うのですが、大手の総合系ファームでは、どこもこのような傾向があるのではないかと思います。
さらには、そのような新しい世代のコンサルタントが、「自分たちがコンサル業界のあり方を変えていく」というマインドで働いているかというと、そういうわけでもないかなと思います。ここ数年の採用の拡大もあり、すっかり大企業になってしまった総合系ファームにおいては、社歴が短い若手社員が積極的に組織を変えていく、といったスタンスは持ちづらいのかもしれないですね。
こうした中で年月が経ち、一世代前の朝から晩まで働いていた世代から新しい価値観を持った世代への交代が進み、そうした新しい世代のコンサルタントが自分たちに合った制度を作っていかないといけなくなります。、そのうえで、数千人、数万人の規模を維持しこれまでと変わらないバリューを出し競合と戦っていく、という難しさが出てきますね。
「替えが利かない有能コンサルタント」になるには
中川:ではそうした時代を迎えることを前提に、個人として今後どうすれば自分の叶えたいことを実現していくための勝ち筋を見いだせるとお考えですか。
ちょこさん:ここもやっぱり個人の方向性によって分かれてくる世界だと思います。
ハードワークしたい人は少なくなっていると申し上げましたが、やっぱり今でもそういう若者はいるんですよね。そういう人からすると、短納期・高単価・高難易度といった、いわゆる戦略案件みたいなものに入れてもらえるように、振られた仕事はもれなく打ち返したり、ロジ回りも嫌がらずに対応したりというのを繰り返す、人脈づくりもしっかり行うなどして、社内のプレゼンスを高めるというが最適解だと思います。そうすると、周りから認められて段々と難易度の高い案件にピックアップしてもらえるようになるはずです。
一方で、ワークライフバランスを重視したい人たちにとっては、求められていることをいかに効率よくこなせるようになるかが大切です。そのためには負担をなるべく減らすために、定型化できる作業は徹底的に定型化する、一度経験したことはより若手のスタッフにお願いできるよう仕組み化するといった工夫をすることで、生産性を維持しつつ、プライベートを含め自分に使える時間を捻出する必要があると思います。
両者は相反する価値観なので、どちらの路線で行くかを考えたときに、後者が多数派になるのではと思います。
中川:そういう状況になった10年後のコンサルタントとしての市場価値は、今とはかなり変わると思うんです。またAIチャットボットの誕生等で、知識も一般化されている。こうした中で、私はちょこさんのように個人の深みを出していくことが大事なのではないかという仮説を立てています。
例えばTwitterで活躍するだとか、さまざまな人脈を作ることでビジネスに対するインパクトを増やしていくとか、さまざまな経験を積んでいくことによってロジックの上に厚みをもたせたるといった、その人じゃないとできない、「替えが利かない有能」になるための能力を身に着けていくことが大事だなと。
ちょこさん:『左利きのエレン』という漫画のワンシーンに、サラリーマンは「替えが利かない有能」「替えが利く有能」「替えが効かない無能」「替えが利く無能」という4種類に分類される、という話が出てきます。
コンサルタントという職業が一般的になってきた昨今では、「替えが利く有能」を目指すのが短期的な解ではあるものの、私も自分ならではのバリューの出し方を考え「替えが利かない有能」を目指すことも大事だと考えています。
(引用ツイート:https://twitter.com/ChoConejito/status/1412340995622985729)
中川:ちょこさんは、コンサルタントのキャリアやバリュー、「替えが効かない有能」であるために個人としてどういうことが必要だとお考えですか。
ちょこさん:私も日々考え続けていることではありますが、どんなコンサルを目指すにせよ、評価されるのは特定の部分で高みを目指す「120点を取る人」か、何をやってもそこそこできる「毎回80点を取る人」かのどちらかです。
「120点を取る人」を目指すなら新卒からロジックを鍛えに鍛えて、アサインされたインダストリーなりリファンクションなり、特定のテーマに関しては何が来ても打ち返せる、その分野の第一人者というくらいまで熟知した状態を目指すべきです。AIチャットボットのような、ありものをまとめて集計したらこうなりましたよ、といったものではなく、今までの経験をベースに、まだ世に出ていない全く新しいものを、勝てそうな確度や理由とともに言えるところまで高みを目指す必要があります。
一方、「毎回80点を取る人」になるためには、とにかく広く浅くできることを増やし、変化に対応し続けていかなければなりません。私がまさにそのタイプです。これまで事業会社や監査法人、コンサルやITベンダーなど、結構いろんな職歴を経験してきたので、どんな人がどういった働き方をしているのか、この業界のこの部署にはどういう方がいて、抱えがちな課題はこれだ、といったことをある程度見聞きしてきました。その中で多様なプロジェクトに関わってきたので、引き出しを意外とたくさん持ってるんです。これらを総動員して、大きな社会の変化に対応した提案ができれば、市場価値としては高くなると思います。
中川:「120点を取る人」もしくは「毎回80点を取る人」となるために、特に若手に必要なことは何だと思いますか。
ちょこさん:いずれにしても必要なのは、色々な案件に入ることです。割と産業化されたコンサルファームのスタートダッシュの切り方として、最初の3年間をダラダラ過ごすか、細かい作業でも意義を見出して取り掛かるかで全く変わってきます。
もちろん自分の望んだ案件ばかりに入れるわけではありません。しかし、例えば新卒コンサルタントがアサインされることの多いシステム開発に絡むような案件、例えばSAP導入の場合、会社のお金の流れのあり方やデータの流れ、さまざまなレイヤーの方と混ざって働くときのチームマネジメントのあり方など、学びの要素はそこここに散らばっています。
ですので、最初の3年は日々どんなタスクを振られても、それをつまらないなどと思わずに、さまざまなシーンでインプットを意識することで自分の引き出しを増やし続けること。そうすると、環境が大きく変わったときでも、「以前似たようなことをやったぞ」といえるシチュエーションが増えてきます。そうすれば自分なりのプロジェクトの進め方やスタンスの取り方、仮説の持ち方ができるようになるのです。
まとめると、常に80点を取るためには、どんなにつまらないと思っても、目の前の仕事にある学ぶポイントを自分から見つけにいって、引き出しを増やせるかが重要です。そうではなく少数派として戦略案件で圧倒的なバリューを出していくことを目指すなら、自分の強みや軸をどうするのかを考えながら、いかに深掘りできるか、修行みたいなアサインをしてもらえるよう、上司と相談してください。
プロフェッショナルギルドはコンサルの新たな働き方の選択肢に
中川:私達が手掛けるプロフェッショナルギルドは、まさにどちらも集まった集団です。フリーランスはそういったことが難しいと感じているので、そうした方を有益的につなげ、社会課題に対してアプローチしていく組織を作りたいと思っています。
また「尖った人の元で働きたい」「自分もそうなりたい」という人たちに対して機会を提供できる組織でもありたい。それが私たちBallistaという組織であり、プロフェッショナルギルド「Yoake」です。中間搾取や不当搾取のない、一人ひとりがプロフェッショナルとして輝ける時代を、DAOやNFTやブロックチェーンの技術を使いながら作っていきたいと思っています。
こうした中で、Ballistaやプロフェッショナルギルド、フリーランスに対する期待値についてどうお考えですか。
ちょこさん:そもそも私個人のスタンスとして、安易なフリーランス化はあまりいいことではないと思っていますし、それを発信し続けています。それは「しがらみを抜けたい」「自分だけの裁量がほしい」など、今の環境から逃げたいというような、後ろ向きとも捉えられる理由でフリーランスになった方は、今と同じステージでより早く、より細かく仕事ができるといったスキルアップはできるけれど、より難易度の高い案件の中で一段階上の成長につながる案件を任せてもらえたり、国内外の自社事例を基にした最新の知見を得られたりといった、大手ファームという組織でしか経験できない学びの機会を得られなくなるからです。
その点においてプロフェッショナルギルドは、こうしたことも学べる場だと感じています。そうして自分の市場価値とスキルを高めることで、より強固な個人として、またプロフェッショナルギルドという組織力を活かしたチームとしてひとつ上のステージの案件を取れるようになるでしょう。
また個人で活動すると、どうしても今できることを基準にした値札がついた状態になります。そのため未知の領域にチャレンジしようとすると、安定したフィーが貰いづらくなる、といった懸念もありますが、そこもギルドとして動くことで、お互いを補い合いながら、相互に学びあって成長できますよね。
現状こうした選択肢は多分ないと思います。これが業界に受け入れられる形で出来上がるとすれば、コンサルタントの働き方のバリエーションが確実に一つ増えることになります。
独立しても腕を磨きながら新しい交流の機会も得られて、そこから入れる案件も増えていく。もしくはギルドとして案件を取れるキャリアデザインができるとなれば、確実にプラスになるだろうなという感覚を持ちました。
中川:ありがとうございます。今後は現状から逃げたいという理由ではなく、自分のやりたいことを実現するために独立することが大事だと思っています。それをギルドの仲間たちと一緒にできる、冒険者が集まって冒険に出ることができるというのが、私自身もこの仕組みのポイントだと思っています。
また、労働時間の切り売りではなく、トークンエコノミーのような形で、自分の貢献がトークンとして上がっていくようなことも、今後ぜひやっていくことで、今回お話いただいた課題感を解消できればと感じています。